登山の基礎知識 2009・11・24更新
           田上山岳ガイド事務所

1.ストツクについて
2.楽々山行は不健康
3.バランス能力の低下が一番大きい
4.トレーニング効果は3ヶ月〜6ヶ月後
5.心配です中高年夫婦での登山
6.冬山(雪山)について
7.再び雪山について
8.還暦を迎えるにあたって
9.トムラウシ遭難事故について


1.ストックについて

 最近多くの中高年登山者がストックを多く見受けます。使用している理由のほとんどがバランスを保つためというのがほとんどです。加齢に伴う体力の退化のうちバランスの退化のカーブがいちばん急激です。確かに2本足で歩くより、3本足のほうが安定するかも知れませんが、ストックを使えば使うほどバランスの退化は止まらないことも事実です。  体力強化のうち筋肉や心肺能力のトレーニングは少なくない登山者がやっていますがバランスのトレーニングはあまりなされていません。それどころか。ただ歩きやすいと言うだけでストックの需要は伸びています。私はこのホームパージをご覧の登山者の皆さんにまず、1994年に出された国際山岳連盟(UIAA)医療委員会の登山におけるハイキングステッキの使用についてをご紹介したいと思います
@
伸縮自在ステッキは、正しい技術を持って使用しなければならない。  すなわち、高さの調節が可能で、下方向に力がかかった時、使用者の両手をしっかり支えるような構造のハンドルのついたステッキを常に2本使用すること。 いちばん重要なのは2本のステッキを下降方向に向け、できるだけ接近させて使用することである。
A使用したときの効用
  正しい技術を持ってステッキを使用すれば、とくに、下降の歩行では、ステッキは足、腰にかかる1時間あたり何トンもの荷重を吸収することができる。 高齢者、肥満者のうち関節や脊髄に疾患がある場合。 重い荷物を背負う場合。 雪の斜面や雨の中を歩くとき、渡渉のとき、視界が悪いとき。
B使用したときの注意点
  技術の誤用
  もし、体とステッキとの間隔がおおき過ぎる場合、衝撃を緩和する力が減少するばかりでなく、強力な回転モーメントが発生することになる。これにより体のバランスを崩すことになりかねない。
Cバランス感覚の減退
  歩行者自身の気持ちとしては、ステッキを使用するほうが、より安全であると思われるかも知れないが、ステッキを使用し続けるとバランス調整能力を減退させ、これにより安定性が損なわれることがある。 ステッキの使えないむづかしい山岳地帯では、この欠陥は徐々に顕著となり、バランスの維持に問題が生ずることになる。事実、ありふれた歩行中につまずきやよろめきによる転倒がある。このような事故はステッキ使用中にも発生する。
D生理学的防衛メカニズムの衰弱
   強く圧したり、引っ張ったりという刺激は、関節の軟骨に栄養を与え、また制動筋肉群の弾力性を鍛錬、保持するために非常に重要である。ステッキを継続的に使用することにより、生理学的に重要な緊張による刺激を減退させることになる。
E過剰な負担を避ける正しい歩行技術を。
   運動生理学上の理由から、健康なハイカーにとっては正規のステッキの使用による歩行技術を学ぶことよりも、ステッキを使わずに弾力的で安全な、しかも関節の負担を減少するような歩き方を学ぶことのほうが容易である。
  足の関節にかかる負担の度合いに関しては以下の要素が重要である。
      体重ー肥り過ぎ、背負う荷物の重量、下り歩行の正しい技術
    以上が国際山岳連盟医療委員会の見解です。翻訳 堀川 虎男
    そして、次のような人を除いてステッキの使用は不要だと断定しています。
     @高齢者、肥満者   A関節や脊髄に疾患がある場合  B雪上または雨のなかで渡渉、視界が悪いとき。  C重い荷物を背負っているとき
さて、ステッキをお使いの皆さん、少し考えてみませんか。
   
                                                                                                                        

2.楽々山行は不健康?!

 
私はここ30年近く、多くの中高年といわれる登山者の方々と山行をともにしてきました。その 多くの経験の中で登山はスポーツであり、科学的な思考の必要性を強調してきました。
@リズム感を大切にする歩き方。
   登り始めは体の各部分が日常とは異なった働きを始めます。つまり、心臓が活発に働き始め、心拍数が上昇します。それに伴って呼吸数も増え、肺の働きも活発になります。場合によっては苦しくなり、休みたくなります。このとき、少し苦しいからといってすぐ休んでは折角働き出した五臓がまたスタート時点に戻ってしまいます。30分したら休む、40分したら休むという規則的な、リズム感のある歩きが結果的に強い体、健康な体を作り上げます。しかし、苦しすぎる歩き方も問題です。一般的には170−年齢の心拍数前後で歩くのが良いとされています。これ以下で苦しくもなく汗もかかないような歩き方では体がほとんど(特に心肺機能)トレーニングされず毎回の山行が単にエネルギーの消費に終わってしまいます。
 少し苦しくなるとーあ、お花!とか、お水のませてとかいってやたら休みたがる方がいます。本当に苦しいのではなく心肺機能をが鍛えられていないためにちょつと苦しいだけでそこから逃げたがるわけです。
A健康のために山に行くはうそ!
  よく定年になったら健康のために登山でもやろうか?という方が少なくない。これは大変な間違いです。山岳地帯は寒暖の差は激しい、気圧は低く、山小屋では自宅と違いぐっすり休んだり、好きな食べ物を腹いっぱい食べることもできません。さらに落石や落雷、時には人が上の登山道から落ちてくる場合も(10年に一度あるかないかですが)あります。知識と一定のトレーニングがなければ安全で楽しい、健康的な登山は実現できません。知識は本を読んだり、ガイドや先輩に聞いたりして耳学問である程度習得できますが、不健康な山岳地帯に適応できる体作りは自分でやるしかありません。特に心肺能力の強化が大切です。岩登りや沢登りといった特別な登山でなければ筋力トレーニングは特に必要ないでしょう。心肺機能の強化で一番手軽なものがジョギングです。上述したようにジョギングもニコニコして走るのではなく負荷をかけなければなりません。170−年齢の心拍数で走ることです。さらに継続20〜30分間、週2〜3回が目安です。走っているとき信号で止まり、心拍数が低下したらまたそこから20〜30分走らなければなりません。心拍数は計っているとどんどん低下しますから計るときは15秒間計って、4倍にして確認します。一度計れば自分の170−年齢の心拍数は感覚で(はあはあの息づかい)覚えると便利です。
                                                                                                                        


3.バランス能力の低下が一番大きい!

  体力低下の中でそのカーブの一番大きいのがバランス能力です。登山ではいたるところでバランスが要求されます。しかしほとんどの登山者はバランス能力の低下をストックを持ったり、周りのものを掴みまくったりしてカバーしているのが現状ではないでしょうか。バランス能力の診断方法とし開眼片足立ちがあります。目を閉じて片足で立っていられる時間が20歳で92秒、50歳で37秒が平均といわれています。皆さんはどうですか? バランスのトレーニングはなかなか完璧なものはありませんが凸凹の地面を歩くのが一番、つまり山歩きがいちばんということです。また、日常、道路の白線の上を歩いたり、自転車に乗ったりするのも少しは役に立つでしょう。山ではできるだけストックを使わない、木や岩をむやみに掴まないことバランス能力低下のカーブをゆるめる方法です。                                                                                                                                      


4.トレーニング効果は3〜6ヶ月後

  
ここに10数年前のデータですが全国の老人クラブでトレーニングを半年間続けた時のデータがあります。55歳〜79歳までのものですが、60〜64歳のものを紹介しましょう。
  @握力      男性 40.7kgから41.1kg 5.9%上昇
             女性  23.4kgから24.4kg 4.3%上昇
  A垂直跳び    男性 23.1cmから36.3cm 9.7%上昇
              女性 19.6cmから21.9cm 11.7%上昇
  B立位体前屈  男性 4.7cmから6.7cm 42.6%上昇
             女性 6.4cmから7.4cm  23.4%上昇
  C閉眼片足立ち男性 31.9秒から33.8秒  6%上昇
             女性 16.9秒から24.4秒  43.2%上昇
  とざっとこんなものです。60歳を過ぎてなお現状維持どころか体力の向上ができるのです。しかしトレーニングにはあまり効果がでないものもあります。瞬発力を必要とする反復横とびや、ジグザグドリブルなどがそうです。ジグザグドリブルでは−8.7%(60〜64歳男性)−26.7%(75〜79男性)など後退が見られます。瞬発力を必要とする岩登りや沢登りは高齢者にとって要注意なスポーツといえます。                                                                                                                                                                                                                                    

5.心配です中高年ご夫婦での登山         

 最近、平日の山で定年後の余暇を楽しんでるご夫婦に良く会います。多いときは3〜4組のご夫婦にお会いします。お若いときに経験があったのか、ビギナーなのか分かりませんが.そのほとんどが自家用車での山行です。中には車で仮眠して登られるケースも少なくありません。私が心配なのは事故、遭難の時の対処がご夫婦でできるのか?ということです。登山の経験が二人とも同じ場合悲惨です。事故の場合どちらも対応ができません。おそらく。おろおろされるでしょう。手っ取り早いのは携帯電話が通じれば110番することです。それでも場所によって救助隊がなかなか入れなかったり、また初心者のために自分の場所を正確に伝達できなかったりします。その間に事故者の容態が悪化することも考えられます。私は女性のお客さんが滑落し、骨折した事故がありましたが意識がはっきりしていたので容態を確認し、防災ヘリを呼んで搬送してもらいました。又、山岳会の山行でも極度のバテの人を2時間あまり数人で背負って深夜山小屋に運んだこともあります。いづれも二人だけのパーテイではなく5〜6名でした。私以外に3〜4名のベテランがいました。仮にご主人が山のベテランだとしても奥さんが血だらけになっているのを冷静に対応するのはなかなか大変です。
ここで私はいくつかの提案をします@消防署などでやっている救急法の講習会を必ず受けてください。A携帯電話はご夫婦で別々の会社のものが望ましい。圏外の確立が下がります。B夜行や車での仮眠はできるだけ避けて、登山口の宿泊施設を利用して下さい。睡眠不足や過労での登山は厳禁です。Cできればガイドなどから簡単な搬送法を学んで下さい。資料だけでも取り寄せてください。D留守家族か(居なければ)近所の方にどこどこの山に行きます。何時位には帰宅しますと伝えるか、メモを残すようにして下さい書きたいことはいっぱいありますが、最低以上のことを守っていただければ事故、遭難の場合も救助の可能性が広がると思われます。                                                                                                                                                


6.冬山(雪山)について

  少なくない登山者は冬山というとすぐ、アイゼン、ピッケルを連想し、それがあるか?だとか、何本爪だとかを盛んに論議しあたかもそうすることが冬山の常識かのようにふるまいます。私は昨年の冬12本爪とピッケル(バイル)を使ったのは八ヶ岳の主稜を登った時だけです。他に2千m以下の山を数十座登りましたが、
そのほとんどは4本爪の軽アイゼンとストックでした。 つまり冬山装備は山岳自然の状況を正確に把握することが大切です。10センチ程度の雪が氷化したぐらいの山であれば軽アイゼンで十分なのです。さらに足元のバランスを確保するために二本のストックがあればベストです。10〜12本爪のアイゼンは歩き方に工夫をしなければ自分自身の足にアイゼンを引っ掛けて転倒する可能性があります。また、ピッケルはその使用方法を正確にマスターしなければ宝の持ち腐れとなりかねません。ピッケルはその開発の歴史を学べばよく分かる道具です。つまり、ピッケルは欧州の山々を登るために考案されました。欧州の山々は1年を通じて岩と氷の世界です。ピッケルはアックス(斧)とシャフト(杖)を合体させたものです。アックスは氷の斜面を切って足場を作るためのものです。さらにシャフトは文字どうり体のバランスを保つものです。これ以外にも滑落停止やスタカツト登攀(隔時登攀)の支点などにもピッケルは活用されていますが、これは開発後に登山者が応用したものです。足場を切る必要もなく、バランスも十分両足で保てるような冬山(例えば北八ヶ岳周辺)でピッケルをぶらぶらさせて歩いている様は決してかっこいいとは言えませんね。登山用具についてもっと学びたい方は岩波新書のー山への挑戦ー堀田弘司著を読まれることをお勧めします。 
                                                                                                                                                                                                                                                                                           
                

7.再び雪山について

  3月19日谷川連峰仙の倉岳2026mに登っていた神奈川県の中高年山の会のメンバー9名のうち、最後部を歩いて いた女性2名(54歳と62歳)がザックカバーの乱れを直そうとしてパーテイから離れ、翌日50m位離れた所で遺体で発見された。死因は凍死。私は何回もこの山に登ったものとして何故死ななければならなかったのか?どうも初歩的なミスのような気がする。                                                               
1.まだ冬山なのにザックカバー?
  通常、雪山の場合ザックカバーはしない。理由は簡単、余り役に立たないのと、ザックの中のもの頻繁に出し入れするからです。他の季節に比べて体に物品を付けない。(ポシェットやウエストポーチなど)又 ピッケルやスノーバーや赤布などがザックに直接くくりつけられています。これらの出し入れにザックカバーは不適です。そして防湿、防水にはインナーに防水バツグを使用するのが一般的です。さらにナイロン袋などに濡れてはいけないもの は二重にして収納します。 

2.何故?リーダーが最後部にいなかつたのか?
  パーテイを組んで登山する場合基本としてリーダーまたはサブリーダーが先頭と最後部を占めます。これはパーテーの全体を掌握するのにその位置が一番見えやすいからです。ところが今回の遭難の場合どうも一番体の弱い、経験の少ない女性が最後部にいたようです。もし、最後部の女性がサブリーダーであればザックカバーの補修で歩行を停止した段階でパーテイに歩行停止を命じたはづです。    

3.ビバーグの装備も能力もなかつた。
  最悪2名の女性がパーテイから離れたとしても、助かる方法はいくつもあります。おそらく天候は良くなくいわゆるホワイトアウトの状態(視界がほとんどない)だったのでしょう。こんな時はワンダリングという現象を起こします。これは数100mの範囲をグルグル歩き回ることを言います。私も以前谷川岳の天神尾根でワンダリングし西黒沢へ迷い込む寸前に磁石で助かったことがあります。自分の感で歩いていたのです。ワンダリングを30分、1時間と繰り返すうちに心身とも疲労し正確な判断ができなくなります。実際この2名の女性は雪洞はおろか雪穴さえ掘っていません。さらに寝袋は持っていたようですがツエルト(簡易テント)がなく直接雪面に寝たようです。つまり雪山で雪洞を掘る技術、緊急時のツエルトなど雪山の装備や技術がなく無謀な素人登山といえます

4.女性2名のことも大切ですが、パーテイ全体の雪山の経験や技術にも疑問が残ります。
  パーテイの編成は前述のとうりですが女性と離れてからの行動に疑問が残ります。昼過ぎに見失っているのですから5名の男性と2名の女性は5〜6時間しか行動していませんので体力は十分残っていたと思われます。しかし翌朝わづか50mしか離れていないところに凍死した2名の女性たちはいたわけです。本当に必死に捜索したのか、疑問です。50mといえば赤布を10m間隔で立てても5本で済みます。磁石で東西南北を捜索すれば必ず発見できたはづです。赤布がなければ50mロープで円を描いて捜索すればみつけられます。本隊(男性5名と女性2名)はテントを張り、その中でコンロでお湯を沸かし暖かいものを食べ一夜を過ごしたことでしょう。雪上で寒さに震え、全身が凍る中死と闘って倒れた2名の女性を思うと同じ登山者として襟をたださねばと思います。もし、このパーテイが赤布やロープなどの雪山の必携品を持っていなかったのなら自殺山行と言えるのではないでしょうか? 
                                                                                                                         

 

8.還暦を迎えるにあたって
 4月以降更新していないのであちこちから苦情がきてます。このページがgoogleで検索すると「一番」にでてきます。お金を払っているniftyではなかなかヒットしません。このページを更新しないと「なんだ古いな!」と見た人に思われメニュー画面にいってもらえません。そのことが最近分かったのです。とにかく、山の雑談でもいいから書くことにしました。
「岩登り」ですが私はもともと下手で、自分はアルパインだから下手でも何でも登頂できればいいんだと思っていました。ところが、ここ2年余りインドアクライミングを多くて月4〜5日通ってるんですが結構上達して昔(と言っても30年余り前ですが)登れなかったゲレンデの岩がリードでスイスイ登れるんです。57歳から始めたジム通いが功を奏したのです。やはり、スポーツは「やればやるほどうまくなる」んですね。
 ところが最近グレードでいうと10bというんですが、それから先なかなか進まず足踏み状態です。それだけではなく1週間もジムにいかないと10bも危なくなります。つまり、現状維持するためにトレーニングしているのです。実は明日11月18日私の誕生日で満60歳になります。もうとか、ついにとか、やっととか……いったいどんな形容詞が合うのか分かりません。つい最近まで「あの60のじじいが!」と気に食わないとぶつぶつ言ってましたが。とんでもありません。自分の番です。「あの60のじじいが!」の仲間に入った事実に目をつぶるわけにはいきません。でも、でも、新しい目標「山の大好きなお客さんと自分の好きな山に行く」ことにしました。何だ同じじゃないかと思われるでしょう。が、「嫌いな山には行かない」ことにしたんです。がんばっても10数年の人生です。お客さんに媚びず、山に媚びて生活したいと思います。
                                                                                                                        
9,久しぶりの更新です。話題は山岳遭難
 「岳人」誌9月号に過去最高となった山岳遭難数について触れています。1417件、1853人、遭難者のうち40歳以上の中高年が80%。死者、行方不明者は278名で前年より5名増えています。遭難者を目的別にみるとハイキング、沢登りを含めた登山が1271名で69%、山菜、キノコ取りが20%。山岳遭難の状況は「道迷い」が39%、つづいて滑落、転倒と」なる。携帯電話や無線機での救助要請が多いが、電波が通じない山域も少なくありません。私も8月の初め、東北の白神岳の山頂で電話しましたが、まったく通じませんでした。ところがそのあと私の友人が地元の方に確認、山頂付近で1箇所通じる場所があることが分かりました。皆さんも行く山の電波の状況は事前によく確認されたほうがよいと思います。

10,ご無沙汰です。08年忙しくなりました。
 「岳人」の07年5月号に私のことが2ページにわたり掲載されていることは報告してないかな?興味のある方は図書館か古本屋で ご覧下さい。さて、お話は多忙の理由です。今年2月私が所属する日本勤労者山岳連盟(会員2万1千人、全国に700余りの 山岳会やハイキングクラブがある)の全国理事に任命されました。20年位前にやってはいたのですがここ10年余り全国的な活動 からは遠ざかっていました。ひょんなことでまた出戻って動くことになりました。活動の中心は「中高年登山者の安全のために」これ からどうするのか、ということです。正式な部署は「ハイキング委員会」ですが課題からして「遭難対策部」などとも手をたづさえて いかなければと思っています。会員のためにやることが、ひいては多くの登山愛好者、ハイカーのみなさんのためになると信じて います。さらに私が多忙になったのは3月に前出、日本勤労者山岳連盟(通称・労山)の下部団体である「東京都勤労者山岳連盟」 (会員3000名、150の山岳会・ハイキングクラブ)の理事にもなってしまったのです。こちらでは理事長の手足となって横ばい状態 の都連盟を飛躍させる活動(と言うとかっこはよいが)事務局におります。週に3回も会合が入る時もあります。そのせいか「ガイド 業」はさっぱり。月に1週間もあれば多い方です。空いてる日はパチンコ屋のアルバイトで生活費を稼いでいます。どうかこのHP をご覧になったらガイドの仕事をご紹介下さい。ある程度稼げば日本の登山界に新しい風を吹き込めます。やや、オーバーかな。

 

9.トムラウシ遭難事故を通して考えるスポーツとしての登山

                     日本勤労者山岳連盟理事 田上 千俊

1、登山・ハイキングは本来、安全で楽しいスポーツ 

「バタバタと倒れた」「
4人だめかもしれない」などの見出しで報道された去る716日の遭難事故は多くの登山者と国民に大きな衝撃を与えた。この時期はツガザクラ、キバナシャクナゲ、チングルマ、エゾイソツツジなど数えきれない高山植物が咲き乱れ、好天ならば楽しい山行となったはずである。私自身も15日に旭川に入り、163名の仲間と旭岳をめざした。始発のロープウエイが17mの強風で1時間余遅れ、私たちは9時過ぎに姿見駅に着いた。気温は何と10℃。風、雨ともにやむ気配はない。そこで旭岳への直登を避け、樹林の多い裾合平のまき道を登り、旭岳の北側の間宮岳からの登頂をめざした。裾合平までの2時間余りで風雨の収まるのを期待し、同時に高山植物も楽しもうという寸法。おそらく稜線は20m近い風雨が予想される中、私たちは花を愛でられる程度の風雨の中を歩いた。しかし、裾合平に着いても風雨は止まず、4人とも夏山装備のため立ち止まると身震いするほどの体感温度だった。私の従来の経験と低気圧の移動の遅さから判断して裾合平から引き返すこととした。4時間近くお花を楽しんだ仲間は「また晴れた日に来よう!」と下山した。この日、多数の死亡者を出したパーテイも私たちと同じ判断をしていたら、また「楽しい山行」ができたはずである。登山は大自然相手のスポーツ。原則的な行動をすれば本来楽しいスポーツであることを強調したい。

2、ツアー登山の長短とガイドの労働実態

 8名もの遭難者をだしたA社のパーテイは15名の参加者に3名のガイドがついていたと 報道されている。が、そのうち2名は添乗員で大雪山縦走は初めてとのこと。参加者の体調や天候の判断などをし、行動を決断すべきガイドの1名が遭難死する状況では何の緊急の手だても取れない。おそらく添乗員は緊急時の訓練も受けていないし、ツエルトなどの装備も不十分だったと思われる。ヒサゴ沼避難小屋からトムラウシ山頂付近まで通常の倍以上の歩行時間。この間に参加者に大きな異変が発生している。無理をせず、ヒサゴ沼避難小屋に引き返せば、ほとんどの人が助かっていたと思われる。ここで言えることは、「判断すべきガイドがいなかった。」、2名の添乗員では「判断できなかった。」ということである。ガイドの多くは会社へ登録し、山行ごとの請負的な雇用関係となる。山行を失敗すれば(登頂できなければ)当然次の仕事は減る。報酬の多くは日当制で1万円前後が少なくない。(実費は会社負担)こうした労働実態を改善するためには、ガイドに対する高度な研修や装備の貸与、予備日などを設定し、ガイドが危険と思われる場合に自由に判断できる日程の組み方など改善すべきだろう。多様な山行を企画しているツアー登山の参加者の多くは未組織登山者だが、山岳会に所属している会員にも利用されているのが現状である。宿泊場所や交通手段の確保、最良のコース設定など個人ではできにくいのがその理由。多くの登山愛好者に多くの登山の機会を与えることは決して悪いことではない。ツアー会社は収益を減らしてでも安全登山のために努力することが求められている。

3、登山団体を含む「社会人スポーツ団体」への大幅な助成を。

 私たち勤労者山岳連盟(労山)は全国的に安全登山のための多くの取り組みを行ってき
た。雪崩講習会、各種リーダー学校、実践的な技術教育、スポーツ生理学の学習やトレーニング方法、救急法や搬出法など数知れない。そのほとんどがボランティア活動。そのような中で、今年度、文科省のスポーツ予算は「競技力向上戦略及び地域のスポーツ環境整備推進」の名目で225億円余を計上し、そのうち「地域のスポーツ環境の整備の推進」として昨年の約1.5倍の60億円余りが組まれている。しかしこのうち41億円は「体力向上のための取り組みの充実」「中学校武道必修化にむけた条件整備」となっており「地域のスポーツ環境の整備」予算軽視といえる。又、文科省所管の「登山研修所」が事実上の民間委託となるなど、安全登山対策を強化すべきなのに大きく後退しているのが現状である。登山団体を含む多くの地域で活動している「社会人スポーツ団体」への大幅な助成が今必要だと思う。(09.7.27付 しんぶん赤旗に掲載)


10.だいぶ元気になりました。
今年の9月の大型連休に初めて南アルプス南部の荒川三山や赤石岳を縦走しました。気のあった仲間との楽しい山行でした。ところが長い赤石岳の下山中、あと1時間余りで椹島に着くという時左足に激痛が走りました。伸びた筋肉が戻るのを拒否してるのです。なんとかごまかして下山はしましたが左膝の裏側の筋肉が固まった状態でした。帰宅後、すぐ整形外科を受診「関節炎」というあっけない診断。その後、伊豆の山や島根の大山などに痛み止めを飲みながら山行を続けましたが、痛みと筋肉の固まり感は収まりません。友人の紹介で「整骨院」に行きました。半月くらい通ってますが相当回復しました。が、1時間も山を歩けば症状が出ます。その出る強度がだんだんと弱くなる感じです。11月21〜22日、十二ケ岳で岩トレし、22日八ケ岳ツルネ東稜の下見で4時間ほど歩きました。さすがに下山はサポーターをしなければ歩けませんでした。2日後の24日痛みはありますが、歩くのに不自由はありません。今日も整骨院に行くつもりです。整骨院は東京昭島市拝島にある「松原名倉堂」というマッサージ師が6名もいるいつも繁盛している整骨院です。電気治療やマッサージをするとすぅーと痛みが消えますが、数時間すると少しリバウンドします。その繰り返しです。
少しずつ回復しています。考えてみたら毎月平均10〜15日の山行をここ10数年こなしてきました。1回の山行で10〜15キロ歩くわけですから足がおかしくならないのがおかしい?ですね。アフターケアーがなかったのでしょう。口では「ストレッチを!」と言いながら自分はやらなくても大丈夫とタカをくくっていたのでしょう。3月に入り相当回復しました。ゲレンデの岩登りや4〜5時間のハイキングは大丈夫です。是非お声をかけてください。のべ1ケ月あまりの通院でした。ほぼ回復してきました。まだ5時間程度しか歩いていませんが、日帰りハイキングはバッチリです。4月から夏のためにお客さんと一緒にトレーニング山行を始めます。先日(3月20日)も雪山をワカンをはいて3〜4時間歩いてきました。天候に恵まれたこともあってルンルン気分の山行でした。5月には2〜3日の縦走をやりたい(トレーニングで)と思っています。(10.03.23)
松原名倉堂整骨院の外観16号線から数分。 調整と呼ばれるマッサージ痛くて涙がでる。 1月〜3月伊豆の城が崎の岩場に通いました。

   

 田上山岳ガイド事務所